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「進撃の巨人」エレンの過去への干渉はどういう仕組み?時間旅行の理論解説

 

先日完結したアニメ進撃の巨人。最高のエンディングで感動した人が多かったと思います。しかし進撃の巨人は、やや難解なストーリーなので、なんだかしっくりこないと思う人も多かったかもしれません。その中でも一番多いのはエレンが時間を超えて過去に影響を与えているところかと思います。

 

具体的には以下の2点です。

・エレンがグリシャに礼拝堂で始祖の巨人と戦わせた&レイス家の殺害を命じたところ。
・最終回でエレンがダイナ巨人にベルトルトを食わせず、母カルラのところへ向かわせたところ。

 

他にもエレンの影響なんじゃないかと考察されているところはありますが、本編で描かれたのはこの2つかと思います。

この記事では、その部分について詳しく解説していきます。

 

タイムトラベルの3つのパターン

まずフィクション作品におけるタイムトラベルには大きくわけて3つのタイプが存在することから説明します。

進撃の巨人はタイムトラベルではありませんが、過去に影響を与えるという意味では同じことなので、ここではタイムトラベルということで話を進めます。)

1.1つの時間軸を何度も書き換えられるパターン

このパターンの代表作で言えば、タイムトラベルものの定番「バックトゥザフューチャー」です。主人公がタイムマシーンで過去に行き、そこで過去に影響を与えると、それに伴って主人公が元居た未来も変わってしまいます。

このように1つの時間軸が、何度も書き換えられるパターンが一つ目です。

しかし進撃の巨人はこのパターンのタイムトラベルではありません。

2.複数の世界線パターン

このパターンの代表作でいえば、ドラゴンボールでしょうか。ドラゴンボールではトランクスがタイムトラベルをします。トランクスは過去に行き悟空を救いますが、それによってトランクスが元いた未来が書き変わって悟空が生き延びた世界に変わるわけではなく、悟空が死んだ世界線のまま、それとは別に悟空が生き延びた世界線が生まれました。

これが複数の世界線パターンです。しかし進撃の巨人はこのパターンでもありません。

3.書き換えの出来ない一つの世界線パターン

最後がこのパターンで、代表作で言えば、ターミネーター(初期)です。ターミネーターでは、未来で人間対機械の戦争が起きていて、機械軍が人間軍のリーダーを消し去るため、過去にターミネーターを送って、人間軍のリーダーの母親を消そうとします。人間軍はターミネーターから母親を守るため、ある男を送り、その男がターミネーターから母親を守り切ります。そしてなんと、その未来から来た男と母親の間に子供が生まれ、それがのちの人間軍のリーダーとなるのです。

このパターンでは、未来に起きる事が決まっています。未来が決まっているので、男がタイムスリップしてくることも決まっています。それらの未来から過去への影響を踏まえた一つの時間軸が存在するというのが3つ目のパターンです。

そして進撃の巨人のタイムトラベルのパターンはこれが当てはまります。

 

 

エレンが将来、礼拝堂のグリシャに干渉することが決まっている。エレンが将来ダイナ巨人にベルトルトを食べさせず母カルラのところに向かわせることが決まっている。だから私たちが知っている進撃の巨人というストーリーがあります。そういった未来からの干渉を含めた上に進撃の巨人の進んでいたということです。

 

なぜパターン3だとわかるのか

なぜこのパターン3だと言えるのかというと、以下の理由があります。

 

1.エレンの台詞
2.他の世界線が描かれていない

 

エレンの台詞というと、最終話で「何度も試みては失望したが、未来の記憶は寸分たがわぬまま起きる」と発言しています。それ以外にはも「最初から全てが決まっていたのか」というセリフもありました。これらのセリフから分かるようにエレン自身、最初は世界線は変えられるものなんだと思っていたようですが、そうではなく、世界線は最初から全部決まっていて、変えられないものだったということがわかります。

 

また他の世界線が描かれていないという理由もあります。進撃の巨人ではIf世界のようなものがたまに出てきます(ミカサと始祖ユミルだけですが)しかしそれは世界線というよりはIf世界の一場面を切り取っただけの妄想シーンのようなもので、進撃の巨人では基本的に一つの世界線しか描かれていません。ということはエレンが過去に干渉する前の、世界線というのもないのです。

 

もちろんそういった別の世界線が実はあって…といったことを想像することは出来ますが、基本的には作品に書かれていることから理解するものだと思うので、ここでは、これらの理由から、3番目のパターンだと断定しています。

 

エレンはなぜ過去に干渉したか

最後になぜエレンが干渉したのかという理由、エレンのモチベーションのところを考えてみたいと思います。

これらの2つをエレンはなぜどんなモチベーションでやったかというところです。

 

・エレンがグリシャに礼拝堂で始祖の巨人と戦わせた&レイス家の殺害を命じた。
・ダイナ巨人にベルトルトを食わせず、母カルラのところへ向かわせた。

 

ここまで説明したように、進撃の巨人は書き変わらない一つの世界線しかありません。だからエレンは何かを変えようとして干渉したのではなく、これまでの歴史に辻褄があうように干渉したにすぎません。逆に干渉しなかったら、ここまでの歴史が変わってしまいます。

 

なので自分が干渉することを知っていたエレンにとっては「自分がここで干渉しなければ、これまでの歴史が大きく変わってしまう」(本当に変えられるかは別の話)

という思いがあったと想像します。もしその歴史を変えたいと思うなら、エレンはそう行動するはずです。しかしエレンはそうしようとはしなかった。なのでエレンとしては、その世界線の大きな流れに納得していたというのがあったと想像します。

 

もちろん母親に死んでほしいわけでも、レイス家を全滅させたいわけでもない、その他、仲間の死がある世界線に全て納得いっているわけではない。でもミカサやアルミン達が助かる未来がある。もし歴史が変わって、エレンが始祖の力を持たない世界線になってしまったらパラディー島全滅の可能性が高い。だからこそ納得できたというところがあると思います。

 

そしてエレンが納得するだけの自然な感情の動きもあったと思います。エレンはフリーダの思想に怒りを表していましたが、これは純粋な怒りだったと思います。

そのようにエレンの自然な感情と自然な考え方からこれまでの歴史を受け入れ、過去に干渉したと想像します。

 

別の視点から見れば、そこでエレンが悩もうと悩むまいと、一つの世界線しかないので、エレンの干渉は必然的に起きるものです。エレンが干渉しないというのはありえないことです。なので元々エレンの自然の感情と考え方から起こす行動しか未来のエレンの行動として決まっていないという見方もあると思います。

 

ということで私なりの結論として、エレンの干渉はエレンの中での自然な感情と思考から、その世界線に納得し、受け入れた結果、行動したのだと考えています。